館林の暑さを検証する(1) 概要-7月編

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また暑い夏がやってきます。

館林は「暑い街」と言われています。「日本一暑い街」と言われることもあります。

さて、「暑い」とはなんでしょう。気温が高いこと?気温が高いとはどういうことでしょうか?最高気温のことでしょうか?最高気温が高ければ暑いのは確かですが、暑いというのはそれだけのことでしょうか?

いくら瞬間的な最高気温が高くなっても夜は涼しいかもしれません。最高気温は一番でなくても夜蒸し暑かったら体感的にはきつい暑さですよね。

一言に「暑い」といっても、いろんな暑さがあります。では館林の暑さとはどんなものでしょうか。

ということを、考えて行きたいと思います。

館林の暑さの歴史は観測所の歴史

まず、暑いとか暑くないとかがわかるには、気温を定期的に測定されている必要があります。

館林には気象庁の観測所があります。この観測所で観測と記録がが開始されたのは、昭和53年(西暦1978年)12月22日と、気象庁の資料にあります。

群馬県気象観測施設一覧表 (PDF)

気象庁が公開している過去の観測データから、1978年12月の館林の観測データを見てみると、確かに12月22日から観測が始まっていることがわかります(降雨データはそれ以前から測定しているようです)。

実際の観測所を見てみましょう。


正面に見える大きな建物は美園町にある館林消防署です。

その一角の赤で囲んだところに観測所があります。


生垣に囲まれているので、あまり目立ちません。ぱっと見、観測所かどうかわかりにくいですが、


「館林地域気象観測所(アメダス)」の文字があるので、これが観測所であることがわかります。

ここで、日々刻々と気象データを計測しているわけです。そのデータを見てやれ「暑い」、「今日は日本一!」とか言ったりしているわけですね。

とりあえず館林の暑さデータ30年分をざっくり見てみる

気象庁は過去の観測データをネットで公開しています。

気象庁|過去の気象データ・ダウンロード

このデータを利用して、館林の暑さの検証をしていきます。

今回は初回なので、おおまかな館林の暑さを見てみようと思います。また、比較対象に近隣で暑い街として有名な熊谷市のデータを利用します。

館林の7月の暑さ

まずは、7月のデータを見てみます。期間は1987年から2016年の30年間です。わかりやすくするため館林と熊谷で比べてより高いほうの数値のマスを黄色くしています。

最初に、それぞれの項目の説明をします。

  • 「A.月平均気温」 これはまず毎時0分の気温を1日24回計測します。その平均値が一日の平均気温となります。月平均気温は一日の平均気温の月ごとの平均値です。ややこしいですね。つまり、1時間毎に測定した気温の月の平均値ということです。
  • 「B.日最高気温の平均」 毎日の最高気温の月間平均値です。少々乱暴に言うと、この数値が33℃だったら、だいたい毎日33℃くらいまで気温が上がってるなあというイメージです。
  • 「C.日最低気温の平均」 これはBの反対で一日の最低気温の月間平均値です。
  • 「D.猛暑日日数」 1ヶ月間で最高気温が35℃を越えた日数です。
  • 「E.熱帯夜日数」 1日の最低気温が25℃以上の日の日数です。寝苦しい夜というイメージですね。

言葉で説明すると少々むずかしいかもしれませんが、実際の数字を見てもらえばイメージしやすいかもしれません。

ではそれぞれの項目を見て行きます。

A.月平均気温

「A.月平均気温」から見ていきます。過去30年間で月平均気温が一番高かった年は2001年の28.4℃、次に高かったのが2004年の28.2℃です。反対に最も低かったのは1988年の21.7℃、次に低かったのが1993年の21.8℃です。

年によってけっこうばらつきがあることがわかりますね。過去5年間を見ると、25℃台が1回、26℃台が3回、27℃台が1回で、いくぶん暑さがおさまってきたのかなあとも思えます。

熊谷と比べてみると、だいたい館林のほうが少しの差ですが月平均気温が高いです。2002年以降は常に館林のほうが熊谷より高いか同数値となっています。

B.日最高気温の平均

次に「B.日最高気温の平均」を見てみます。

この数値はピーク時の気温が高ければ高いほど高い数値になります。極端な話、40℃出た10分後に20℃になっても、記録されるのは40℃の数値だけです。

過去30年間で日最高気温の平均が最も高かった年は2004年の34.4℃です。次に高かったのが2001年の34.1℃です。一方最も低かったのは1988年と1993年の25.0℃です。これはA.月平均気温のデータとだいたい一致しています。最高気温が高いほど平均気温も高くなる傾向にあるということですね。

熊谷と比べてみると、なかなか興味深いです。2008年まではほぼ毎年熊谷のほうが数値が高いのですが、2009年以降は館林のほうがずっと高い数値が出ています。

C.日最低気温の平均

最高気温の反対の「C.日最低気温の平均」を見てみます。

この数値は夜や明け方どれだけ気温が下がるかの目安になります。

過去30年間で日最低気温の平均が最も高かったのは1994年の21.6℃、次が2001年の20.9℃です。最も低かったのは1989年の14.6℃、次が1993年の15.7℃です。

熊谷との比較では、「B.日最高気温の平均」ほどはっきりしていません。日最高気温の平均では熊谷を下回った年でも日最低気温の平均は熊谷より高いことがよくありました。つまり、熊谷より寝苦しい日が昔から多かったと言えるのかもしれません。

D.猛暑日日数

一日の最高気温が35℃を越えると猛暑日となります。この日数が増えると、気象庁が発表している「今日の全国観測値ランキング」に掲載されることが増えます。つまり暑いまちとして認知されることになります。ようは目立つということです。

今日の全国観測値ランキング(気象庁)

過去30年間で猛暑日日数が最も多かった年は2015年の17日。次が2001年の14日です。7月上旬は梅雨明け前のことも多いので2015年の17日は破格の数値と言えます(そのあたりの検証は次回以降してゆきます)。反対に少なかった年は1988年、1989年、1993年、2003年が0日。このように7月の数値はばらつきが大きくなる傾向にあります。

熊谷との比較では、「B.日最高気温の平均」に近い傾向にあります。2008年以降は館林のほうが日数が多いか同数のいずれかです。

E.熱帯夜日数

熱帯夜の日数が多ければ多いほど、寝苦しい夜が多いことになります。最高気温のように派手ではありませんが、人間に与える影響は大きいでしょう。

過去30年間で熱帯夜日数が最も多かった年は2015年の14日。次が2001年の12日です。「D.猛暑日日数」の傾向と一致しています。反対に最も少なかったのは1988年、1989年、1991年、1993年、2003年、2007年、2016年です。こちらも猛暑日日数の傾向に近いのですが、昨年2016年はかなり異例で、猛暑日が10日もあったにもかかわらず熱帯夜は0日です。

熊谷との比較では、30年間通して館林のほうが常に熱帯夜日数が多いか同数値となっています。熊谷と比べて夜の気温が下がりにくいということですね。それが月平均気温の高さにも現れています。

7月のデータについては、以上です。続いて8月のデータの検証もするつもりでしたが、すでにかなり長くなってしまいましたね。8月分は改めて別記事にすることにします。